小説

 ぼんやりと瞼を持ち上げる。 この数日のうちにすっかり見慣れた木の天井だ。 すでに部屋の中は明るくて、開け放たれた窓からはそよそよと気持ちの良い風が吹き込んできている。 朝だ。 気持ちの良い朝だ。 だというのに龍馬の気持ちはやっぱりどこか塞…

 それからの二日は、穏やかに過ぎていった。 以蔵は相変わらずこまごまと家の修繕を行い、龍馬はそれを手伝ったり、ぷらりと村を探索したりなどして過ごす。 何度かおばあが力仕事で難儀をしているところを手伝ったなどした結果、家に呼んでもらったり、こ…

 翌日の目覚めは、とても穏やかなものだった。 窓から差し込む日差しの強さに促されるようにして、龍馬の瞼がぼんやりと持ち上がる。隣の布団はすでに片づけられており、以蔵の姿はない。 日差しの具合から見て、どうやらすでに日は高く上った後であるらし…

 龍馬が寝かされていたのは、壁際に箪笥が一つあるきりの何もないがらんとした和室だった。 布団を敷くでもなく、畳の上に直接転がされていたらしい。 豆電球だけがぽっちりと灯り、開け放たれた窓から吹き込む涼やかな風にわずかに揺れている。龍馬が寝か…

『すみません、子どもが熱を出してしまって……。申し訳ないのですが、本日の予定はまた次回に延期させてもらっても良いでしょうか』 賑やかな駅構内の雑踏の中、そんな内容の電話を受けた男、坂本龍馬は一度ぱちりと瞬いて、それからすぐに意識して柔らかな…

彼女目線が楽しめる写真集が発売される話

 深夜、0時前。 ああそろそろか、とラジオをつけた。 周波数は合わせっぱなしにしているので、スイッチを入れるだけで良い。 最初のうちはスマホのアプリで聞いていたラジオなのだけれども、なんとなく「ラジオ」というものが欲しくなり、買ってみた。 …

以蔵さんが無双する話

 それは、二人がとあるバラエティ番組に出演したときのことだ。 その番組では男性アイドルグループが五人で司会を務めており、メンバーとゲストが様々な方法で勝負をしては、ゲスト側が勝った分だけ番組の最後に宣伝時間を確保できるというのが仕様になって…

二人の部屋に神棚がある話

 岡田以蔵と立花葵の熱愛スクープと岡田以蔵と坂本龍馬の熱愛スクープがそれぞれ連続して雑誌の一面トップを飾って大騒ぎになった後のこと。 それが以蔵と龍馬のちょっとした悪戯だったことが判明してからは、世論的にもあまりにも過熱する報道によるプライ…

龍馬さんと以蔵さんが悪ふざけする話

 立花葵はタレントである。 デビューの切っ掛けは、高校生の時に街中でスカウトに声をかけられたことだ。 可愛いねと褒められて、モデルをやってみないかと誘われて、アルバイト感覚でカメラの前に立つようになった。 読者モデルから始まって、葵はそのう…

番宣で岡田以蔵が『岡田以蔵』をやる話

 いよいよドラマの放送が近くなったある日。 二人が呼ばれたのは、試写会での舞台挨拶だった。 その日は二人そろってスーツ姿で、にこやかにメディア関係者たちの質問に答えながら、折にふれて作品の内容を紹介したり、撮影の中で起こった面白おかしいエピ…

二人が一緒に暮らしているのがバレる話。

 それはドラマの宣伝を兼ねて出演したバラエティ番組の企画でのことだった。 ずばりテーマは「今をときめくイケメン俳優、坂本龍馬と岡田以蔵、この二人が恋人だとしたらどんなシチュエーションでイチャイチャしたい!?」である。 番組ホームページと街頭…