海のいろ
ざざん、ざざん、と波の音がする。 ざざん、ざざん、と打ち寄せて、さぁああああっと引いていく波の奔流に弄ばれて小さな貝が細かく砕けた砂が擦り合う音が微かに響く。 龍馬は、ぼんやりとそんな音を聞きながら海を眺めていた。 酷く澄んだ海だった。 …
龍以SSカルデア軸,龍以
紐でつないでおけ
「………………」「お竜さん、どうかした?」「……何か、喉にひっかかっているような気がする」「えええ、さっきの戦闘でかな」 レイシフトを終えて戻ってきたカルデアの食堂にて、龍馬の傍らに浮いたお竜がもにもにと口元を動かす。 んくんく、と喉が鳴る…
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この世の春
「あ~……」「おっさんみたいな声出しなや」「しょうがないよ、僕もうおっさんだもの……」「……………………」 隣から向けられる「うへえ」とでも言いたげな眼差しには気づかぬふりで、龍馬はざぶざぶと両手に掬った温泉の湯で顔を洗う。 肉体的にはまだ…
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窓のない部屋
どうにも、窓がない部屋は良くないと以蔵は思っている。 酒を呑むのは楽しい。 わあわあ騒いで、ついでに賭け事の一つや二つも出来ればなお楽しい。 だが、外の様子が見えないのは、なんとはなしに息が詰まる。 もとより以蔵の生きていた頃の『家』とい…
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たぐってつなぐ
それは、瞬きの間に起きたことだった。 斬り捨てたエネミーの脇を擦り抜けた先に、まるで魔法のように突如また別のエネミーが現れたのだ。 否、魔法でもなんでもない。 単なる以蔵の手落ちだ。 大型のエネミーの気配に溶け込むようにしてその背後に潜ん…
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みらいのぼくへ
以蔵には、不思議に思うことがある。 己の古馴染みである男のことだ。「以蔵さぁん、今日はな、ドレイク船長からこの世で一等美味いちいう酒ばあ貰ったがよ、一緒に呑まんかえ?」 にこにこと嬉しそうに、以蔵から言わせればちっとも締まりのない顔をして…
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バレンタイン
この気持ちに何と名前をつけようか。 最近以蔵は、そんなことばかり考えている。 最初は友愛だった。 友としてその男のことを慕っていた。 次は憤怒だった。 友だったはずなのに自分を置いて故郷を出ていった男のことが憎たらしくて、以蔵が助けて欲し…
龍以SSカルデア軸,龍以
お花見
カルデアは、静かで賑やかだ。 音のすべてを飲み込むような雪に囲まれ、どこもかしこも外の雪と同じ色をしてひやりと冷たい壁と床に囲まれて、どこまでも無機質に静かであると同時に、無数の人や英霊たちの鮮やかな人柄を内包して賑やかな喧噪に満ちている…
龍以SSカルデア軸,龍以
いづるかたな
「龍馬、ちっくとつきあえ」 それはある日のことだった。 レイシフトを終え、夕食を終え、お竜はカルデア長めの生き物の会なるよくわからない会合へと出かけていった後のことだ。 どうやら蛇やら竜やら、とりあえず長めの生き物に所以のある者だけが参加す…
龍以SSカルデア軸,死して,龍以
はつこい、わかるまで
それは、ある夜のことだった。 普段散々世話になっているんだから運んでやりなよと散々はやし立てられて、以蔵は仕方なく古馴染みの男をずりずりと引きずって歩いていた。 最初はその嫌味なほどに長い足を持って引きずり始めたのだが、ぎょっとしたマスタ…
龍以SSカルデア軸,龍以
どんどん好きになる
それは、ある日の午後のことだった。 その日は週に何度か設けられているマスターのための休息日で、そういった日はよほどの緊急の案件が舞い込まない限りはレイシフトは行われない。 よって、カルデア全体にどことなくまったりとした間延びした空気が流れ…
龍以SSカルデア軸,龍以
クリスマス斬首
龍馬には、なんとしてでも眠って貰わねばならない。 何故なら、以蔵には本日サンタクロースになるという大事な役目があるからだ。 サンタクロースというのは、人目についてはならぬものであるらしい。 誰にも見つからずに速やかに家屋に侵入し、目的を遂…
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